「DNAおりがみ」でナノレベルの造形を自由自在に

「DNAおりがみ」でナノレベルの造形を自由自在に

「DNAおりがみ」でナノレベルの造形を自由自在に

「おりがみ」。それは、日本古来から伝わる伝統の遊びである。なんの変哲もない一枚の紙が織りなす複雑で繊細かつ多様な表情は、単に遊びの域を超えて世界中の芸術や工芸、数学などの分野に影響を及ぼしている。

 

このように多様な側面をもつ「おりがみ」に精通した人でも、先日アメリカの電子ジャーナルScienceDailyに掲載された記事には驚かされただろう。そのタイトルは、”DNA ‘origami’ could help build faster, cheaper computer chips“(より速く安価なコンピュータチップを作るのに、DNA「おりがみ」が役立つ)というものだ。

 

このアイディアは、アダム・T・ウーリー教授(Adam T. Woolley, Ph.D.)がアメリカ化学会(American Chemical Society)の第251回全国会議で発表したもの。ユタ州にあるブリガムヤング大学(Brigham Young University)のWoolley教授とロバート・C・デイヴィス准教授(Robert C. Davis, Ph.D.)、およびジョン・N・ハーブ教授(John N. Harb, Ph.D.)のチームは、立体構造の「DNAおりがみ」を活用することで、半導体をより高度に省スペース化した新たなチップを実現できると提唱した。

 

DNAをメモリや何かの素材に使えるのではないかというアイディアは、1980年代から示されていた。今回の提案のかなめとなる「DNAおりがみ」の技術は、DNAを素材として使うための具体的な方法として、2006年にカリフォルニア工科大学(California Institute of Technology)のポール・ロスマンド(Paul Rothemund)が雑誌Nature上で発表したものである。

 

その内容をかいつまんでいえば、二重らせん構造をなす二本のDNA鎖を一旦ばらして、二重らせんを好きなところでつなぎかえることで自在に形を作ることができるというもの。一本の長いDNA鎖を用意し、その長いDNA鎖を結び合わせたい場所の住所をもつ短いDNA鎖をいくつか用意して混ぜ合わせ、あっためてから冷やすと、冷やした時に短いDNA鎖が長いDNA鎖の住所で指定された部分を引っ張ってきて結びつける。それでお望みの形を作ることができるというわけ(上のTED動画の5:50ぐらいからを観るとわかりやすい)。短いほうのDNA鎖たちはホッチキス(ステープル)のような役目を果たしているので、そのまま”staples”と呼ばれる。

 

この方法の優れたところは、あまり難しく考えることなくナノサイズの構造が作れるということ。しかも、あっためて冷やすだけであらかた間違いなく設計した通りの形になる。これは画期的な方法で、ナノレベルでの造形に大きな可能性を開いた。数年後には2D、つまり平面だけでなく、3D、立体的な造形も可能となり、その応用の幅は飛躍的に広がった。

 

そして今回の発表は、立体的造形が可能となった「DNAおりがみ」を活用したコンピュータチップの作成という内容だ。より正確に言えば、従来は樹脂などで作られてきた半導体のパッケージをDNAで作成することで、その極小化を安価で可能にするということであると思われる。現在、半導体は数十ナノメートルという単位でしのぎを削っている。このあたりはバイオというより電子工学などの世界なので詳論は避けるとしても、以下の記事などを読んでいただければその雰囲気は感じていただけるかと思う。

今年は14nm半導体決戦の年~ところで14nmとはどこの長さ?(TELESCOPE Magazine)

 

しかし、ナノメートルの半導体モジュールを格納するパッケージの組み立ては至難の業。そこで、立体的DNAおりがみの登場である。素材が豊富であるため安価であり、かつ半自動的に組みあがるために組み立てが簡単なDNAおりがみをパッケージとして活用できれば、極小半導体モジュールの製造コストが大幅に削減できる。そこで冒頭の記事、より速く安価なコンピュータチップを作るのに、DNA「おりがみ」が役立つ、という結論に至る。

 

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▲DNAおりがみで作った半導体パッケージのイメージ図

Credit: Zoie Young, Kenny Lee and Adam Woolley

バイオテクノロジーと電子工学の融合で半導体の世界にイノベーションが起こりつつある。現在はウーリー教授の下で学生たちが金分子の格納にトライしており、今後いろいろなものをDNAおりがみの中に格納する実験を行っていくとのこと。

 

この技術が実用化されれば、現在は10億円以上かかっているチップ製造工程のコストが破壊的に下落する予定である。

 

追伸:DNA origamiのwiki https://en.wikipedia.org/wiki/DNA_origami にはまだ日本語版がないようです。よろしければどなたか作成してみてください。。。

 

Photo:By OrigamimonkeyOwn work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=23081745
Writer: げ

 

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