OBN Annual Awards 2015 の受賞者が決定/研究所発ベンチャーのヘプタレスについて

OBN Annual Awards 2015 の受賞者が決定/研究所発ベンチャーのヘプタレスについて

OBN Annual Awards 2015 の受賞者が決定/研究所発ベンチャーのヘプタレスについて

ITのテクノロジーセンターといえば、少し前はシリコンバレーだった。今のシリコンバレーはITに限らずさまざまなスタートアップの集まる場になっているものの、やはり中核となるのはIT企業である――googleやfacebook、LinkedInにOracle、Adobeなど。バイオテクノロジーについてはどうだろうか。バイオテクノロジーのセンターと言われてもぱっと思いつくような場所がない。バイオの世界的大企業といえば、(悪名高い?)モンサントなどがイメージされよう。製薬企業系も規模は大きいのだろうけれども、いかんせん具体的な社名がイメージ出来ない。フォーブスの「米バイオテクノロジー企業 上位10社リスト」(2015.5)をみると、1位:ギリアド・サイエンシズ・インク、2位:アムジェン・インク、3位:セルジーン・コーポレーション・・・と続くが、いずれも知らない名前ばかりだ。

 

バイオテクノロジーに着目するムーブメントは世界的であるが、企業集約地としての「バイオテクノロジーセンター」のようなものはまだ生まれていないのだ。世界一のバイオ企業ネットワークがある「場所」というものが、まだ形成されていないともいえる。そこで、バイオ系のネットワークを広げるためのイベントが注目されることとなる。今回は、たまたまUpdateが流れてきたイベントを紹介したい。OBN Annual Awards 2015である。

 

・OBN Annual Awards (イギリス)

http://www.obn.org.uk/news/obn-annual-awards-2015-celebrates-uks-life-sciences-champions/

このイベントは、イギリスのOBNが開催した、イギリスの生命科学分野においてもっとも優れた企業を決めるアワードである。日本語で書くと凡庸な感じだが、英語では”UK’s Life Science’s Champions”と書いてあるので、結構インパクトがある。管見では、イギリスのバイオ系アワードでは最大のイベントだ。

 

OBNは、バイオ系企業と大企業や投資家とのネットワーキングを行う非営利団体で、本アワードの開催は今年で7年目となる。オックスフォードの中心街から車で南へ20分ぐらい走ったところに位置し、MEPCというゼネコンが作ったミルトンパークという大規模なインキュベーションエリアにある。そのインキュベーションエリアには90棟ある建物に200社程度のスタートアップ企業が入っているとのこと。ユニバーシティではなくカレッジ、いわば都市と大学が一体となった地域、という概念を持つイギリスらしい取り組みであると感じる。

 

チャンピオンには12社が選ばれ、サイトに一覧が載っている。様々な企業があるが、ここでは日本のそーせいグループと組み、タンパク質研究についてアワードをもらったHeptares(以下、ヘプタレスと表記)を紹介しよう。

 

ヘプタレスの受賞理由は、「2015年2月、日本のバイオ医薬品会社そーせいと提携し、 Gタンパク質共役受容体を標的とする新薬の作成のために継続的に注力したこと」とある。Gタンパク質共役受容体はいろいろな疾患の原因となる受容体であり、この構造解明に寄与したことでブライアン・コビルカとロバート・レフコウィッツという二人の研究者が、2012年にノーベル化学賞を受賞したばかりである(僕は歴史学者なので、2012年はつい最近の事のような気がするけれども、この分野ではきっと昔の話なのだろう)。1994年にも関連する研究をしたギルマンとロッドベルにノーベル生理学・医学賞が与えられている。

 

Gタンパク質共役受容体(以下、GPCRと略す)は、細胞膜の外側から細胞膜の内側に情報を伝達する役割を果たす「受容体」の中でも、やり取りする情報の種類が多い受容体であるため、研究が注目されている。GPCRの中身を明らかにすることで細胞に対する情報伝達の方法がわかることになり、細胞の動きについて多くのことを人工的に制御できることになると期待されている。僕は門外漢なので、分かる人は是非当団体のライターになって説明記事を書いてほしい。

→GPCRについて本記事末尾に付記しました

 

そんなGPCRを標的とする新薬開発で受賞したヘプタレスは、GPCRを標的とした新薬の臨床を行う企業であり、2007年にケンブリッジのMRC分子生物学研究所(英国立研究所)とロンドンの国立医学研究機構の研究成果をもとに創業した。2015年2月にそーせいグループの完全子会社となり、現在に至る。StaR®という独自技術が彼らの強みで、同社のプレスリリースにはあらゆる受賞履歴が掲載されている。そーせいによる同社の買収額は「最大400 百万米ドル」(そーせいグループリリース)といい、当時の為替(1ドル118-9円)換算で472億円の買収であった。創業8年で500億近いバリュエーションというのは、そうそうあるものではない。先日日経が買収したFTは買収額1,600億円だから、その1/3~1/4程度の規模があったということである。

 

バイオのコア技術を持ってビジネスを行うことは、もしその技術が本当に素晴らしいものであればビジネスとして大成するし、多くの製薬に反映されることを通じてたくさんの人の幸福に結びつくことはもちろんである。ヘプタレスの買収とビジネス展開は、大学・研究所発バイオベンチャーの、一つの成功モデルである。

 

* * *

 

付記。そーせいのプレスリリースにあるGPCRの解説が分かりやすかったので、みなさんの参考になればとおもって以下に引用する。

G タンパク質共役受容体( GPCR:G-Protein Coupled Receptor)について

受容体とは、細胞膜表面、細胞質、または核内に分布し、細胞外からの刺激を認識、伝達し、細胞内の反応 を誘起するタンパク質をいいます。その受容体と、受容体に結合する物質の組み合わせにより細胞の起こす反 応が異なり、この仕組みを解明することが創薬のカギとなります。 GPCRとは、受容体の一種で細胞膜を7回貫通する構造を有するタンパク質をいいます。ヒトのGPCRは約800種 あると言われていますが、薬のターゲットになるのはそのうちの約370種くらいであり、さらにこのうち約150 種のGPCRは、結合する生理活性物質が分からず、「オーファン受容体」と呼ばれ、新たな創薬ターゲットとして 注目されております。

そーせいグループ適時開示情報「英国へプタレス社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ2015年2月

 

Writer: げ

 

LINEで送る
Pocket