真実を追求することが科学者の仕事じゃない

真実を追求することが科学者の仕事じゃない

真実を追求することが科学者の仕事じゃない

こんばんは。

賛否が分かれそうなタイトルをつけてみました(笑)。
真実を追求していくことが科学の醍醐味なんだ!という人もいるでしょう。

私もそう思っていました。科学者は0を1にする仕事(作業)だと。
そう思っていたからこそ、科学に興味を持ったんです。
自力で謎を解決できる、さらにいえば好奇心の赴くままに好きな分野について真実を追求できることが科学者として得られる最大のメリットだと思っています。

好きなことを仕事にすることは難しいけれど、それが叶いやすいのは科学者なんじゃないか、とすら考えています。

しかし、先ほど、ふらふらとネットサーフィンしていたら
科学者のThomasさんが執筆した記事を見つけました。
彼が、

「真実を追求することが科学者の仕事じゃない」

という考えを表明しています。とっても面白い内容だったので、今回ご紹介しちゃいますね!

Thomasさんが科学者になるまでの過程が、4つのステップに分けて書かれています。博士過程卒業後の、いわゆるプロの科学者ですね。この4ステップが研究をしている方には共感を得やすいかなと踏んでいます(笑)。

1. 科学者を志す学部生が経験することあるある
a1568d5fcecfb28bd35221c3e93276b8_s

・授業にまじめに出て、まじめに講義を聞き内容を習得する。テキストも読み込む。
・ちょこっと実験をする。
・実験結果は大概予測通りになる。
・だから、自分が知りたいこと(解明されていないテーマ)は、テキストをしっかり読み込んで授業を十分に受ければ全部わかると思うようになる。

学部生、というか多くの中高生もこんなイメージを持っているのではないでしょうか。

理科って楽しい!
教科書に書いてあった通りフラスコの中の水の色が変わったから!
みたいな。

まじめに勉強していれば科学者としてやっていけるんだ   などといった希望を持つ方もいるでしょう。Thomasさんのように。

2. 修士学生あるある
503a65a5ace2a915de2966a20d91bb1d_s

・文献をたくさん読むようになる
・様々な科学者の文献を読むうちに何が正しい説なのかわからなくなる
・学部生時代に感じていた幻想が打ち砕かれる
・自分が論文などを書くときに、様々な立場の文献を読み込んで参考にしたせいで文献調査に終わりが見えなくなる
・もっとたくさん文献調査しよう!がんばろう!と俄然やる気になる。
・研究を続ければ真実を突き止められると心のどこかで思っているため、博士過程への進学を考えるようになる

あるテーマに対して、真実を突き止めようとするあまり文献調査に時間が掛かりすぎてしまうあるあるネタだそうです。
本人にはやる気がみなぎっているし、なんというか、少し切なくなりますね(泣)。
この第2ステップを越えられると、あることに気がつくようになります。
Thomasさんは次のステップで科学に対する考え方が変わってきます。

3. 博士学生あるある
b09d1aadc5dfd69999ecc90e97e44ab1_s

・文献にある通りに実験をしても、そこに記されている結果と異なる結果になることがしばしば出てくる
・理論(教科書や講義の内容だけ)では説明できないトラブルが起きる
・起きたトラブルを受け、(まじめなので、)自分の実験手法を疑い始める
・論文は、見せ方が非常に上手く工夫された読み物だと気づく(マスコミみたいに)

だんだんと…

c17b3bd960f8b7e8629fa9612fc22ae0_s

・誰も真実を突き止めることはできないのでは…?とうすうす気づく
・つまり、自分が追求しているテーマについて誰も真実は分からないと知る

研究にのめり込んでいくと、何が本当に正しい情報なのか分からなくなってくるようです。読んだ文献はそれぞれ主張が異なる上、ある文献に書いてあるように実験しても再現できないとは………。

こうした経験を重ねることで
「本当に正しい情報」
なんてものは誰にも分からないと気づき始めます。
あるテーマに対する1つの真実を突き止めることはできないのだとThomasさんはここで気がつきました。

博士学生にもなれば、上記のようなちょっと悲しいことばかりではなく
文献調査していた時に名前だけ見かけていた研究者と実際に会えるようになる嬉しいできごとも多くなるようです。

4. プロの科学者が見る”科学”とは?
7915b46639131cd44c3c78d52fc1224b_s

・科学とは真実を突き止めるものではなく、現状をよりよくしていく作業

この一言に尽きるようです。

世の中に出回っている様々な論文がありますが、それらにもアラが存在します。
例えば、実験の再現性や手法の選択などなど。

そうしたアラの部分をどうしたら良くすることができるか、を検討して明らかにする。その過程と結果を論文にする。
それが科学者なのだとThomasさんは述べています。

もちろん、自分が発表した論文のアラは他の研究者が修正してくれるかもしれませんし、本人が気付いて修正するかもしれません。

4ステップを経てもなお、科学論文によって築き上げられた既成事実の修正に携わっていきたい、と感じたThomasさんは心から科学者を志すようになったそうです。

彼の”科学者”になるまでのステップが分かったと同時に、

科学者って何をするんだろうと思っていた人や

科学者を志している方で 真実はいつもひとつ! だと信じて
追求しようとしていた人にとって、非常に有意義な情報を得ることができたのではないかと思います。

ぜひ参考にしてみてくださいね。

原文はこちらから読むことができます。
(Thomas M S. On my way to being a scientist (2013). Nature. 497; 277-278.)

それではまた次回をお楽しみに!

Writer:みゆ

LINEで送る
Pocket