バイオ「木材」テクノロジーに、飛躍の可能性あり

バイオ「木材」テクノロジーに、飛躍の可能性あり

バイオ「木材」テクノロジーに、飛躍の可能性あり

Photo: アルフレド&イザベル・アキリザン「わたしの場所はどこ?」東京都現代美術館

 

あまたある建築史の本を引くまでもなく、20世紀は鉄筋コンクリートの時代だった。コンクリートはあらゆる造形を可能にし、鉄筋は十分な強度を提供した。ル・コルビュジエの300万人都市も、ミース・ファン・デル・ローエの超高層ビルも、鉄筋コンクリートが実現したデザインである。いま、東京都現代美術館で展示が行われているオスカー・ニーマイヤーも、コンクリートのもつ造形の可能性を存分に引き出した建築家であった。

 

しかし、21世紀に入った今日、注目されているのは木造建築だ。それも、ツーバイフォーの住宅や、伝統ある日本家屋ではない。木材で建設されたビルである。

 

まずは、こちらの美しい建物をみてほしい。
Sky’s new Believe in Better Building
Photo: Simon Kennedy

これは、「Believe in Better Building」と名付けられた建物で、ロンドンの西、オスタリーに建設された。Skyというイギリスのテレビ局が所有し、研修施設にもなるフレキシブルなオフィスビルである。そしてなんとこれが、木造なのである。

 

建設したのはアラップという世界的な企業。建物と設計などについての詳細な情報は、以下の記事に写真とともに詳述されている。
わずか1年で完成、英国で最も高い木造オフィス」(ケンプラッツ、2015年8月)

 

これに限らず、2010年代に入ってから木造建築への注目は高まっている。いくつか記事を紹介しよう。

日本の風景が変わる!CLTを使って木造高層ビルに挑め!」(BigLife21)では、木造ビル建築を可能にした新技術”CLT”を紹介している。この技術の普及により、国内の木材資源が活用されることへの期待が書かれている(CLTについては、日本CLT協会の説明が詳しい)。

どこまで高く?木造ビル」(Woodist Report)では、模型写真などを交えながら、CLTを活用したカナダ バンクーバーでの30階建て木造ビル計画やスウェーデンの34階建て木造ビルのデザイン案などが紹介されている。

日本での技術革新も進んでいる。「2020年、東京が「木造ビルの森」に 驚愕の新工法 」(日経産業新聞)には、竹中工務店の「燃エンウッド」や鹿島の「FRウッド」など、国産技術の進歩と規制緩和に触れている。

従来のツーバイフォー工法でも、5~6階建ての建築物が登場した。「三井ホームが挑む、都心の「木造ビル」革命」(東洋経済)は2013年の記事で、都心の雑居ビルを木造のツーバイフォー工法で建設したというニュースである。現在はさらに普及が進んでいるだろう。

 

このような木造建築への関心の高まりを背景に、秋田県では秋田杉を活用した建材の研究が進められている。研究の中心は秋田県立大学の中にある、その名も「木材高度加工研究所」。大学の研究所のうち、日本で唯一名前に「木材」を冠した研究所である。

 

つい先日、ここで秋田杉を活用したCLTの強度実験が公開された。「中高層の木造ビルに秋田杉を 強度実験公開」(河北新報)によれば、

「戦後、大量に植林され、伐採期を迎えている秋田杉は需要が低迷しているが、木造ビルの国内普及で大量消費される可能性を秘める。県立大木材高度加工研究所(能代市、木高研)で16日、CLTの強度実験が公開され、林業や建築関係者が熱い視線を送った。」

という。

 

木材に関するバイオテクノロジーはまだまだ伸長の余地がある。たとえば、建材としての木材は、合板に使われる木の種類やその組み方によって強度の向上や軽量化が目指されているが、木そのものの改良はまだまだ進んでいない。

 

また、木材にはたくさんの副産物が発生する。樹皮、端材、おが粉、チップ、解体材などだ。これらの一部はバイオマス発電や暖房のための燃料として加工されるが、廃棄されるものも少なくない。それら副産物の活用や加工プロセスにも、バイオテクノロジーが活用される余地が多くあるはずだ。

 

木材とそのもととなる樹木は、サイズも大きく、成長に時間もかかる。実験室でのバイオテクノロジーでは、すぐに新しい成果を生み出すことが難しい。しかし、時間をかけて日本にある豊かな森林というフィールドをうまく活用すれば、新しい発見や発明が生まれる可能性は低くないだろう。今後、木造建築やバイオマス発電の普及とともに林業や木材市場が活発化し、木のバイオテクノロジーへの注目が集まって、研究室ではなく森の中からバイオベンチャーが生まれたら面白いかもしれない。

 

先日は柿の葉のバイオテクノロジーについて紹介したが、バイオテクノロジーは自然環境と密接に結びついているため、地域性もある(感染症なども同様のことが言える)。都市には都市の、森には森の、畑には畑の・・・という形で、地域の資源や技術に根ざしたバイオベンチャーが育成されたら、地方の活性化にもつながるだろう。

 

(予想外のことに、木材に関連するバイオテクノロジーがあまり見当たらなかったため、今回の記事はあまりバイオっぽくないネタだった。やはり、木を研究するのは難しいのだろうか。。。)

 

Writer: げ

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